アイデアが浮かばない時の対処法③【CMプランナーの経験談】

アイデアが輝く場所 クリエイティブ

こんにちはkiyoです。

今回は「アイデアが浮かばない時の対処法」の第三回目です。

一回目は、「アイデア出しとは答えを出すこと」、答えの前には必ず「お題」がある。ということで、その「お題が正しいお題かどうかを確かめよう。」というテーマでお話ししました。

アイデアが浮かばない時の対処法①【CMプランナーが語る】
こんにちはkiyoです。 今回はいいアイデアが浮かばない時の対処法についてお話しします。 商品やサービスの企画開発や、創作活動、表現活動をしている人など、問題解決や面白いことを追及している人の参考になれば幸いです。 対処法...

二回目は、「自分の中の決めつけを疑う。」というテーマで、広い視野を持ちながらアイデア出しをしようというお話をしました。

アイデアが浮かばない時の対処法②【CMプランナーが語る】
こんにちはkiyoです。 今回は、アイデアが浮かばない時の対処法、その②です。 自身のCMプランナーとしての経験を交えて説明します。 商品やサービスの企画開発や、創作活動、表現活動をしている人など、問題解決や面白いことを追...

三回目の今回は、そうやってアイデアを盛り込んで作られたアウトプットが、残念ながらあまり納得できる出来ではない、魅力的に思えないという時でも、あきらめずもうちょっと考えてみようというお話です。

 

ではまいりましょう。

 

アイデアが浮かばない時の対処法③ 最高に輝ける舞台を探す

いきなりですが、東京都の水道水って普段みんなあまり意識していませんよね?

常日頃ありがたみを実感しながら生活している人は少ないはずです。

まして水道料金以上のお金を出してこの水を飲む人はいないでしょう。

 

でも、もしあなたが砂漠の真ん中を喉カラカラで歩いていて、目の前に東京都の水道水の自販機が現れたらどうでしょう?5000円ぐらい出しても買うんじゃないでしょうか?

 

上の見出しに沿って言えば、水道水にとって最高に輝ける舞台は、砂漠の真ん中かもしれないというお話です。

まぁこれは、「物の価値は状況によって大きく変わる」という当たり前のことです。

しかし、どう状況が変わると何の価値がどう変化するかを、ちゃんとわかっている人はどれだけいるでしょうか?

カニカマはなぜ世界に広まったのか?

スリミ パッケージ
近年、カニカマは世界中(特に欧米)で大人気だそうです。

カニカマは国外では主に「surimi(すり身)」という商品名で流通していて、どこのスーパーでもキロ単位で売られているそうです。

なぜカニカマは欧米の人々に受け入れられたんでしょう?

 

カニの味に肉薄するほど品質が上がったから?

欧米人はめちゃくちゃカニが好き?

 

ポイントは魚に関する食生活の違いにありました。

最近まで、魚介類をあまり食べていなかった国・地域、例えば米国の内陸部、東欧などでは、カニかまは『殻付きでないから食べやすい』『魚臭さがない』点が歓迎されているようです。

その他にも、世界で起こっている“日本食・寿司ブーム”、さらに日本食は低カロリー(脂肪)・低コレステロールだとする“健康食ブーム”、 アレルギー(グルテンフリー、大豆フリー等、ミートフリー)も追風になったと考えられます。

引用元:CBCラジオさん

もともとあまり魚介類を食べる習慣のない人たちが、近年の健康ブームもあり、魚食に関心を持つようになった。

でも魚介類はもともと食べ慣れてないうえにカラや骨が多く、生臭いので食べにくい。そこでカニカマに注目が集まった。というわけです。

日本人なら、健康ブームで魚食を推奨されれば、そのまま魚を料理して食べようと考えますよね。不足しがちな魚介類を摂取する手段としてカニカマを食べるという発想は持ちえないわけです。

日本でカニカマが普及し始めた昭和50年ごろ、カニカマにこんな国際競争力があるとは誰も気付いてなかったはずです。

 

山の葉っぱが最高に価値を持つ場所

あまりにも有名ですが、山の葉っぱを集めて、日本料理のつまもの(飾り)として売る、「葉っぱビジネス」は皆さん聞いたことあると思います。

これも「モノの価値は場所や状況によって変わる」ことに着目した素晴らしいビジネスです。日本料理屋は山の葉っぱの価値を最高に認めてくれる場所なのです。

葉っぱの収集をしていたおばあちゃんの中には年収一千万円の方もいたそうです。

このビジネスの発案者はこの本の著者であり、当時農協職員だった横石知二さん。

地元の人々にとっては何の価値もない葉っぱ。でも実はお金を出してでも欲しがる人がいる。という「発見」は それ自体がすごいアイデアだと思います。

 

広告キャンペーン 「got milk?」(ミルクある?)

画像引用:medium.comさん

「牛乳が最高に渇望される舞台」を描いて大成功を収めた広告キャンペーンがあります。

90年代初頭、カリフォルニア牛乳協会が制作した「got milk?」キャンペーンです。

 

当時、牛乳の主な訴求ポイントは「栄養価が高い」「カルシウムが豊富」「健康に良い」など。

実際、消費者の「牛乳をもっと飲むべき」という意識は80年代に比べて高まっていた。にもかかわらず、消費量は下降の一途を辿っていたのである。

そこで、GS&Pとカリフォルニア牛乳協会は牛乳をよく飲む人を対象に定性調査を実施。(中略)

この結果から、人々が牛乳のことを考えるのは、牛乳が欲しい場面で牛乳がない時だけだという事実が判明。

いわば、牛乳は「失って初めて気づくもの」の類であった。

そして、牛乳が欲しくなる場面とは、パンやシリアル、クッキー、カップケーキなどを食べる時であった。

引用元:Branding Knowledgebase SINCE.さん

 

そのような結論から企画制作された、キャンペーンを代表するCMがこちらです。

 

(内容)
男がラジオを聴きながら朝食をとっている。

ラジオはクイズ番組。ランダムに電話をかけて、電話の相手がクイズに正解すると1万ドル貰えるというもの。

その日の問題は、偶然彼のためにあるようなものだった。彼には正解が簡単にわかった。

そしてなんと電話が鳴る。

すかさず彼は電話に出て正解を答える。

しかしパンを口いっぱい頬張っていて、電話の向こうは聞き取れない。

必死になってミルクでパンを流し込もうとするが、もうミルクは残っていない。

結局聞き取ってもらえず時間切れ。電話が切れる。

最後に一言「got milk?….」(ミルクある?、、、)

 

 

「牛乳」という普及しすぎた、あって当たり前の商品には、私たちは魅力を感じにくくなってるのでしょう。

牛乳の栄養価、健康効果などを訴えるより生理的に牛乳を欲する瞬間を疑似的にでも描いてみせたほうが、見た人は反応し、より牛乳の価値を認めるのでしょう。

ある商品やコンテンツ、作品などを正攻法でアピールしても受け手の反応がよくないなら、どんな場所や状況なら反応してもらえるのか考え、その状況を作り出したり、そんな状況を探し出したりすることは検討してみるべきです。

 

僕の事例  裏起毛トレーナーの輝く舞台

最後に僕の話を一つ。

数年前、ある子供服メーカーの裏起毛トレーナーのCM企画をさせてもらいました。

そのトレーナーは新商品というわけではなく、過去に何度かCMが制作されていました。

過去のCMはいずれも、寒い外でもこのトレーナーを着て元気に遊びまわる子供たちを描いていました。今回の企画もこういったトーンを踏襲するものを求められていたと思います。

しかし裏起毛トレーナーに対するネガティブな意見が消費者(購入決定権を持つママさんたち)への調査により明らかになっていました。

 

裏起毛は熱すぎる。

子供は冬でも薄着ぐらいがちょうどいい。

子供は動き回るから裏起毛なんか着せたら、いっぱい汗かいてむしろ風邪をひく。

 

だいたいこんな意見でした。

僕も娘がいて当時3,4歳ぐらいっだたのでこの意見はよくわかりました。うちも裏起毛のモコモコ服が一着ありましたが、ずっと子供のタンスに入りっぱなしでした。

ネガティブな意見に共感した僕は、この商品にすっかり魅力を感じられなくなってきました。いいとこなしです。

そして過去作と同じ描き方をした企画では、この裏起毛のネガティブな要素を払しょくできないと考え、こんな問題設定をしました。

 

お題
全くいいとこなしの裏起毛のトレーナー。それでも着たくなるシチュエーションってある?

子供は寒くても動き回るから必要ない→じゃあ、じっとしているなら必要かも?

→じゃあ、じっとしているシチュエーションってどんな?

答え

・冬のテーマパークのアトラクションの長蛇の列に並んでいる時

 

・すっかり夜になって強い北風の吹く中、お母さんの自転車の後ろに乗って保育園から帰る時

 

・冬の早朝、息の白くなる中、お父さんと湖で釣りをしている時

 

・冷え込んだ夜の屋外。澄みきった夜空を天体望遠鏡で眺めている時

 

こんなシーンを描けば、我が子に裏起毛を着せときたい。とママさんたちに思ってもらえるのでは?という結論にいたりました。

この企画はありがたいことに複数提案された企画の中から選ばれ、実際にCMになりました。

「got milk?」に比べれば小さい話ですが、「そのモノが最も輝く場所」を探すことができた、僕のささやかな成功事例です。

 

採用されなかったシチュエーション/ママチャリと子供

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

まとめます。

アイデア浮かばない時の対処法③

・自分が作った商品や作品、または身の回りのものが凡庸に思えても、そう判断を下しているのは自分だけの可能性がある

 

・場所や状況、受け手が違えばそのモノの新しい価値が発見されることがある

 

・そのモノが最も価値を発揮する場所を見つけたり、作り出したりできるかどうか、可能性を探ってみる

アイデアを出す方法として直接的ではないかもしれませんが、
何かに対して、「自分が感じていた以外の価値に気づく」というのはアイデアを思いつくためにも役立つ力だと思います。

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